事業の成功のためには、まず組織(チーム)を構成するメンバー1人ひとりの資質・能力を定量的・定性的かつ客観的に把握したうえで、それぞれの人材をどのように配置し、組み合わせていくかが、重要なカギとなります。
当研究所では、日本人に馴染みのある城郭石垣をモデルとして、組織を「可視化」することで、最適な組織編成の姿を探っていきます。
戦国時代の城郭石垣には、自然石を加工せず積み上げる「野面積み」という方法が用いられました。代表的なものに「穴太衆積み」があり、この積み方による石垣は頑丈で400年以上経った現在も残っています。
(※右写真は滋賀県・比叡山坂本にある穴太衆積み。)
特徴として、
1.自然石(野面石)を使用する。
2.自然石の大石・中石・小石をバランスよく配する。3.「品」の字を基本形として積み上げる。
4.全体強度は強い。
5.石の石の隙間には小さな石を詰める。
などが挙げられます。
この戦国時代の城郭石垣構築における多様な原石の組合せと、現代におけるプロジェクト成功に向けた組織の構築の方法にはある種の類似点があると考え、これをヒントに、当研究所の「組織アセスメント」は成り立っています。具体的には、優れた石垣、そして優れた組織ともに、個の特性を活かしてそれを組み合わせ、全体として強固なものとするところが似ていると考えた訳です。
(※左写真は滋賀県・安土城本丸の石垣。1576年(天正4年)から約3年の歳月をかけて築城され、400年以上経ってなお残存しいる。)
「組織アセスメント」では、以下の手法を用いて、組織の現状を見える化するだけでなく、組織のパフォーマンスを向上するために必要な改善すべき人的資本に関わる課題をも可視化します。
これらの手法を組み合わせることで、組織の特徴、組織内の人材バランス、組織風土などを可視化することができます。さらに、組織メンバー1人ひとりについて、関心の対象、コミュニケーションスタイル、ストレス耐性に至るまで分析することができるので、多面的かつ総合的な切り口での分析が可能なため、組織のリーダーは、メンバー1人ひとりの気質を的確に把握したうえで、それぞれの組織の実態に応じたリーダーシップの効果的な発揮が可能となります。
「組織アセスメント」を使った具体的な分析事例をご紹介します。貴社の業種や分析対象(経営層と事業部、また複数の事業部同士の関係、グローバル事業など)のニーズに合わせて、ご覧ください(以下の各事例のリンクをクリックしてください)。
日本の製造業の事例です。当該組織が、どのような人材バランスで構成されているかを明らかにするとともに、組織の強みは何か、どの人材をどのように登用すればより高い成果を追求できるか、などを分析している事例です。
ある日本の企業に関して、経営層と2つの事業部門を統合的に分析した事例です。事業部等それぞれの組織を分析するとともに、それらが統合された全体での分析も行うことで、組織の強みを明らかにするとともに、課題の所在を定量的・定性的に明らかにした事例です。
(事例3:日本企業と海外企業がプロジェクトを組んだ際の分析事例)
日本企業と海外企業がプロジェクトを組んだ際に、それぞれの人材を分析した事例です。グローバルなプロジェクトの場合、特に人材の配置や組み合わせがその成否に大きく関わりますが、日本側、そして海外側それぞれの組織や人材の特徴を明らかにした事例です。
日本にある、設立10年の「知財研究会」の非営利組織の分析事例です。どのようなメンバーから構成されていると、どのような成果を創出できるか、どのような点が課題になりそうかを示したものです。
「バランス思考型」の組織であり、新製品開発と既存製品の改善を実行し大きな成果を出した。組織としてのコア立ち位置は"-02+05"とよいバランスを示しており、長期(ビジョン・戦略)と短期(現実・行動)の両面で強みを発揮することが窺える。
独自技術の強みをもち、特定領域の設計・製造に対応する中堅企業である。組織としてのコア立ち位置は "+04+21"と一定のバランスをもっており、長期(ビジョン・戦略)と短期(現実・行動)の両面で強みを発揮した。メンバーの気質タイプの強さは「とても強い」67%、「強い」22%、「バランスをもつ」11%であり、人材の効果的な活用により、それぞれの領域で大きな成果を出した。
企業は経営、複数の事業部で構成される。市場が成長期にある場合、時代の先を読む戦略的経営を行い、スピードある事業対応が重要となる。特定分野で急成長した企業の「組織アセスメント」を以下に示す。「組織アセスメント」では、個々の組織の分析に加えて、それらを統合した組織全体を分析することができる。以下に、①経営、②事業部1と事業部2、③組織全体、の分析例を示す。
経営のコア立ち位置は"-39+50"と戦略思考で尖っている。「戦略思考型」が強い組織で、イノベーションや新事業の企画等において強みを発揮する。
<事業部1>
「バランス思考型」であり、イノベーションや新事業の対応等に強みを発揮する。4つの象限それぞれに、とても強い(尖った)気質タイプの人材がいるため、その領域で突破力を発揮する力を有している。
<事業部2>
「バランス思考型」であり、現実対応に加えて対人対応や環境変化への対応で強みを発揮する。右側の2つの象限にとても強い(尖った)気質タイプの人材がいるため、その領域で突破力を発揮する可能性を有している。
この企業の組織全体はバランス思考型である(コア立ち位置:"+12+14")。経営のコア立ち位置は"-39+50"と戦略思考で尖っていが、事業部1と事業部2のコア立ち位置を含めると、バランスをもつ組織となっている。経営が創造性、戦略思考で尖った企画を行い、事業部がそれを実行する組織構成となっている。
3つの部門を統合すると「Innovative」/「Operative」、「Cool head」/「Warm heart」に一定のバランスをもっている。個々の部門はそれぞれの状況に対応する強みをもっており、全体として一定のバランスをもった効果的な組織と言える。
日本と海外が連携して開発・サポートなどを実行するグローバルプロジェクトでは、日本側と海外側の人材の管理・技術スキルの評価に加えて、双方の人材の強みを上手に組み合わせることがプロジェクトの継続的な成功につながる。「組織アセスメント」により、日本側と海外側双方の人材を分析し、最適に組み合わせた結果、成功を治めたプロジェクト事例である。以下に、①日本側、②海外側、③組織全体、の分析例を示す。
日本側は「安定思考/戦術思考型」で、現実重視が強くなっている。この組織は、安定思考(=決まった業務を手順に従ってコツコツと地道に実行する)に強みがある。
「戦略思考/安定思考型」で戦略思考と安定思考が強く、決められた手順で業務を実行するところと、先を読んで仕事を進めるところに強みを有している。海外側と日本側との人間関係作りが課題だったが、同質型の思考を有するメンバー構成であったため、双方のコミュニケーションは円滑に進んだ。
日本側と海外側の2つの組織を統合すると、「戦略思考/安定思考型」で、組織全体のコア立ち位置は"-56-50"の安定思考となっており、定型的業務に強いことが分かる。 組織全体では「安定思考」が尖っており、その周囲を別の思考型が補完する形になっている。この組織バランスにより、問題が発生してもメンバーそれぞれが自分の強みを活かして自律的に行動して、早期に解決することが期待できる。
日本にある、設立10年となる「知財研究会」の分析事例である。知的財産をテーマを研究する非営利組織であるが、そのメンバーから分析すると、「戦略思考型」の組織であることが分かる。