「BM気質モデル」では解決できない残り3割のケース
当研究所は、2005年に「BM気質モデル」による人材診断システムを開発し、以降2,000人を超える技術者・管理者・経営者と直接面談したり、フィードバックを実施し、実際に多数のチームを管理・運営してきました。このような人材分析や組織活性化を進めた結果、実感値としては全体の7割ほどは問題解決し、チームの目標もほぼ達成することができましたが、残りの3割ほどについては十分な解決にまで至りませんでした。
そのような現況のなか、あるマネージャー(上級管理者)はリーダー(現場管理者)に対して、心の「器」を大きくして対応したところ問題解決できたという実話があります。ここでは、あるサービス部門のAチームの実例をご紹介します。なおこれは、当研究所の「KOSモデル」開発のきっかけにもなっています。
Aチームの組織編成と実際
Aチーム(計4人)を「BM気質モデル」で分析してみると、相性のよい(同じ気質タイプ)の4人で構成されており、問題が発生してもチームメンバーで相談して解決できると思われます。全員が気質タイプ「Ⅳ型」、「理想重視+非定型対応型」、サブスタイル「Ⅰ型」もあり、一定の現実対応も可能な組織構成となっています。目標を達成できると予想されたチーム編成でした。
リーダー(現場管理者)は専門知識と経験を兼ね備え、高い能力を発揮する一方で、主張が強く、一人で突っ走る傾向が見られました。「Ⅳ型」の大局観をもっているものの、論理的に分析・判断せず、関係者と協働したり、権限移譲して進めるところは見られませんでした。チームメンバー全員が人間関係を大切にする「Ⅳ型」であったことから、リーダーの考えに同調する姿勢をとったことで、チームの調和は維持されました。
問題の発生と対処
そのような状況のなか、リーダー自らが対応した外部委託先で問題が発生しました。リーダーは感情的になり、トラブルに巻き込まれることを避け、責任を相手に投げて、相手との間に一線を画すなど、その後も外部委託先と一切コミュニケーションを避けたこともあり、人間関係がさらに悪化しました。
リーダーと委託先との間で解決に向けたコミュニケーションが一切見られなかったため、マネージャー(上級管理者)は、両者の間に入って調整を試みました。マネージャーは関係メンバー全員から意見を聞く場をもち、幾度かのヒアリングの結果、問題点を分析して解決策を検討しました。最終的には「委託元と外部委託先で、委託内容、責任分担等を明確にし、契約書に明記する」ということに落ち着き、関係者全員が一定程度納得して合意することができました。結果的に、トラブル発生から解決まで7か月間の多大な労力を要しました。
マネージャーが心がけたこと
このトラブル対応の最中には、サービス部門の関係者からは「リーダーを担当から外すべきである」との意見も出されました。しかし、マネージャーは、「将来のためにリーダーを生かしたい」と考えました。以下は、マネージャーからヒアリングした結果です。
【マネージャーの話】
「とにかく、心の「器」を大きくしてリーダーや関係者に対応するようにしましたね。具体的には、
- まずリーダーや関係者の考え、意見などをじっくり聴くようにしました。
- リーダーや関係者の考えをすべて受け容れるように心がけました。
- リーダーや関係者が何を言っても、こちらからは否定的なことを一切言わないようにしました。
- 私(マネージャー)が解決の腹案をもっていてもそれを表明せず、その内容が、リーダーや関係者の話の中で出できたとき、リーダーや関係者のアイデアとして取り上げ、さらにふくらませるようにしました。
- 結果的に7か月という時間はかかりましたが、関係者が納得できる解決策が自然に出てきたと感じます。」